11月下旬、日本に帰国。たった 12日間の滞在だったが、秋は特においしいものが多いと感心することしきり。
またすぐ日本に戻っておいしいものが食べたい!と 2年前の帰国時のブログで書いたが、旬のものが食べられるというのは本当にぜいたくだ。アイルランドにいてうとくなった季節感がかなり刺激された。

庭先に鈴なりに成る柿が秋の空を彩る。こういう柿は甘いのか、渋いのか。昔、高校の同級生が、お母さんが渋柿から作った干し柿をくれたのを思い出す。

実家に滞在中、父が朝焼いてくれた海苔とチーズのトースト。アイルランドではこの組み合わせは誰も考えつかない。

帰国後初の夕食で母にリクエストしたのは、秋刀魚とほうれん草のおひたし。大根おろしで食べる秋の魚は格別だなー。進化した日本のカニカマも初めて食べてみた。

最近はコンビニがドーナツに力を入れているよう。ミスド(左)とセブン・イレブン(右)の似たようなドーナツを食べ比べてみた。これはミスドの勝ち。

父の出身で、私たち家族も 4年ほど住んだ栃木県足利市を訪れた。祖父母が住んでいた渡良瀬川の近くを通り、足利公園内にある草雲美術館に車を停めて入る。田崎草雲(たざき・そううん)は幕末から明治にかけて活躍した足利にゆかりのある文人画家だ。

草雲美術館の敷地内には彼の旧宅、茶室と画室も残っている。

日本に帰ったら絶対食べたいもののベスト 3に入るのが、鰻。足利のうなぎ専門店の魚政さんは「昔は店の外に鰻の生簀(いけす)があった」と父。2人分の鯉のあらい(写真右奥)は、家族4人でつまむのにぴったりだった。シコシコとした食感と酢味噌がよい。

子どものころに何回も来た足利織姫神社。朱色が何とも鮮やか。縁結びの神社として近年人気が出ているようで、ここだけかなりの賑わいだった。

埼玉の実家から東京に毎日出ていくのはおっくうなので、コンサート、展覧会、友人たちとの食事の予定を 2日間にぎっしりつめこんだ。限られた日程でつきあってくれた友人たちに感謝。

住吉の「ティアラこうとう」に行く前に母と妹と寄ったレストラン、8TAKE(はたけ)。古い民家のふすまにウィリアム・モリスの壁紙が貼られていたりする。千葉の農家から直送だという野菜がボリュームたっぷり。これは妹の食べた黒和牛のハンバーグが主菜のランチ。お味噌汁はちょっと濃かったなあ。

大学の同級生といっしょに銀座の天國(てんくに)さんへ。海老がごろりと横たわった天丼は、あっさりめのタレが格別で、ぺろりと食べられる。

その友人からいただいた埼玉銘菓、白鷺宝(はくろほう)。白あんと卵がミルクでコーティングされた和菓子と洋菓子のよいとこどりで、お茶ともコーヒーとも合う。空箱はアイルランドに持ち帰りです。

上野の東京都美術館で開催中だった田中一村(いっそん)展。彼の魚や鳥の描写に目が吸い寄せられる。特に軍鶏(しゃも)の絵は圧巻。

池袋の兼九(かねきゅう)さんへ。小説を書き学習塾を経営する友人と数年ぶりに再会。アイルランドつながりのもう一人の友人も合流した。

まずカニでしゃぶしゃぶをスタート。ショートカットの仲居さんがとても気さくでキュートな方だったのもいい思い出に。

今回の帰国のハイライトは、新潟への旅だった。琵琶を伴奏に『平家物語』の全句を通して語るという伝承活動を一年ほど続けている友人がいて、この機会に何としてでも彼の演奏を聴きたかったのだ。

アイルランドの楽器を弾く友人2人と落ち合い、「平曲」の会場である勝楽寺へ。熱心にメモを取っている常連の人たちに混じって、2オクターブに及ぶ曲節をつけてうたい語られる平家物語の世界に入っていった。巻第九「小宰相」は 2時間強という長い句だったが、本当にあっという間だった。

夜は夜景の素晴らしい近くのレストラン「禅 ZEN」で夕食をご馳走に。ハムのサラダに入っていた柿の味と触感にうっとりした。

そのあとは、アイルランドに数年住んでいた新潟出身の友人宅に 2晩厄介になった。彼女のお母さんの手料理に毎回うならされる。ごま塩がかかっているのはお宅で獲れた栗の入ったお赤飯。新潟のお赤飯はしょうゆ色をしているそうだ。四角い容器 2つに入っているのは自家製の神楽(かぐら)南蛮。唐辛子の一種を味噌と砂糖で調理したもので、癖になるおいしさ。アイルランドでも作れないものか。

日本酒もお米も何でもおいしい新潟最後の食事は、南魚沼市のすし処 鮨岡さんで。

ランチのメニューは「本気丼」という海鮮丼ひとつ。注文時にご飯の量を伝える。我々はご飯少なめを頼んだ。仕入れによって変わるという海鮮のネタは、本日はまぐろの漬け入り。セットで 1400円。

新潟から戻ってみると、アイルランドへの帰国はあと3日に迫っていた。日本で食べ残したものはないか。納豆は2回食べたし、おでん、お好み焼き、もんじゃ焼きも味わった。ミスドの他のドーナツ、牡蠣フライ、焼鳥、焼きそばなどは次の楽しみに取っておくことにしよう。

カレーパンが最終日の朝食。

アイルランドへの帰国は夜の便だったので、羽田空港に昼間スーツケースを預け、その足で横浜方面へ向かった。日本での会社員時代にお世話になった方と本屋「象の旅」で待ち合わせていたのだ。20数年ぶりにお会いしたが、変わらぬ長身で遠くからでもすぐ目についた。

彼が少年時代からよく知る横浜・関内を案内してもらい、明治の洋館を再現した馬車道十番館の喫茶室に腰を落ち着けた。

日本での食事の締めとなったのは、大好きなモンブラン。大きさもクリームの濃厚さもちょうどよい。カフェラテとの相性もぴったりでした。

ダブリンで留守番をしている夫の料理がそろそろ恋しくなってきたころに、日本を出発。次回は2026年の春の帰国を目指します。