ダブリン南部のラスファーナム Rathfarnham という地域に赴いた。以前は家からバス一本で行けたが、最近の路線変更で、バスを途中で乗り換えるか、あるいは20分ほど歩くかしないといけなくなってちょっと面倒くさい。

朝夕は秋風が冷気を運んで、足や首元が出ているとひやっとする。でもこの日は太陽が出ていて気持ちがよく、目的地のラスファーナム城までいい散歩になる。お城の中で開かれている陶芸展に行ってから旧友と会う、というのがこの日のスケジュールだ。

数日前、社会人に焼き物を教えているというアイルランド人男性と話をした。その人は私が日本人だと知ると、京都の工房で陶芸体験をしたことがあると嬉しそうに話してくれた。いつかまた日本で陶芸がしたいという彼の熱が私にも伝わってきた。それがこの陶芸展に足を運ぼうという気にさせたのだ。

ラスファーナム城 Rathfarnham Castle は 16世紀のエリザベス朝時代に建てられた要人の屋敷で、18世紀に大規模な改修工事が行われた。イエズス会などの手を経て、現在は国の管理下で一般公開されている。大きな庭園には子どもの遊び場もあって家族連れが多く、カフェも併設されている。

城の入口。大人5ユーロの入場料がかかるが、「展覧会を見に来た」というと展示スペースにだけ無料で通してくれる。

お金を払えば上階のステンドグラスの可憐な広間や舞踏室、絵画ギャラリーなども見学できる。

この陶芸展は、アイルランドの国のコレクションから国際陶芸アカデミー International Academy of Ceramics による作品がセレクトされたもの。私は去年の夏もここで同じ展示を見たので、毎年恒例の展覧会なのかもしれない。アイルランド、ヨーロッパ出身の陶芸家をはじめ、アメリカ、アジア、アフリカの陶芸家の作品が、かつて厨房だった城の地下室で来る人を出迎えてくれる。

最近修復された 16世紀の厨房の跡。昔は食糧倉庫だったであろう棚に展示物の焼き物がおさまっている。

厨房の暖炉のあった部屋。

作品の中で一番輝いて見えたのは、森正(もり・ただし)さんという三重県出身の陶芸家の織部焼だった。何とも言えない重厚感と色合い、墨で書いたような模様が秀逸。去年の展覧会のときも気になった作品を2点だけ写真に収めたのだが、、あとで見てみたらそのひとつがこの森さんの作品だった。

去年の展覧会で目に留まった森さんの作品。

今年は暖炉のあった部屋で森さんの作品が展示されていた。

もう一人の日本人陶芸家、秋山陽(よう)さんの不思議なオブジェも異彩を放っていた。

足取り軽くお城を出て、旧友のショーンとの待ち合わせ場所のパブに向かった。来年もまたこの展覧会に来よう。