7月半ばになっても、職場に朝行くと暖房がついていることが多い。気温が低いと自動的にオンになるのだ。それをありがたいと感じるほど、朝夕は肌寒い。

アイルランドの6月の平均気温は平年を下回った。7月に入っても、最悪だった去年の7月と同じくらいひどい。最低気温が10度ほど、最高気温が20度にもならない日が続いている。風が吹くと寒い!

この国の人は「こんなもんだ」と諦めの体(てい)。夏らしい夏のある国から来ている人たちは「いい加減に少しは暑くならんのか」と怒ってさえいる。ポーランド人の同僚が一週間故郷に帰り、「ダブリンに戻ったらまるで秋だ」と言っていたが、イチョウの枯葉が何枚も路に落ちているのを見て納得した。

日本の半数以上の都道府県が熱中症警報(最近は「警報」を「アラート」とも言うのか)を発令していることが、イギリスやアイルランドのニュースサイトに出ていた。梅雨明け前からそんなに蒸し暑い日本からするとアイルランドは天国のような気候だが、人間とはないものねだり。私もちょっとだけ暑さが恋しい。

この時期は近所の家の前庭に紫陽花(あじさい)が咲き誇っている。直径30センチもある見事な大輪。

わが家の紫陽花。手入れをまったくしていないわりには今年はきれいに咲いている。

化石燃料のおかげで一年以上、地球は産業革命前(18世紀半ば)より1.5度以上も高い気温になっているそうだ。ヨーロッパは1970年代以来、世界平均の約2倍の速度で温暖化している。

北半球の気候に影響を与えるのは、北極上空の大気が冷やされ気圧が下がることによって作られたジェット気流(強い偏西風)の大きな渦だ。蛇行して進むジェット気流の北は冷たい北極の空気にさらされ、下は熱帯の暖かい空気の影響をより受ける。アイルランドが今寒いのは、ジェット気流より北にあるからだ。

ダブリンの北緯 latitude は53度で、41度から45度の北海道よりもだいぶ高い。日本と同等の緯度に位置するのはスペイン、イタリア、ギリシャ、トルコなど。これらの国はジェット気流の南側に入るため今年も猛暑となり、熱波や山火事が心配だ。日本もどうなるか。

6月下旬のブリュッセルでは気温が30度近くまで上がる日があり、私はその熱気にぜいぜい言っていた。数年前は、アイルランド人の夏の休暇といえばカナリア諸島やイタリアなどの南ヨーロッパだったが、最近は暑すぎるので、「夏は涼しいアイルランド国内で過ごそう」という人が多い。

暑いところから来る観光客にはアイルランドは避暑地になる。涼しいアイルランドにいらっしゃい。

観光馬車の馬には暑いより涼しい方がいいんでしょうね。たまに太陽が照って暖かくなると、観光客は半ズボンで街を闊歩。

聖パトリック大聖堂の前にある公園はダブリンのオアシス。お天気の日には私もお昼休みにときどき行って、ベンチに座ってぼーっとしています。