背広を着ない人たち
先週、先々週は街で家族連れをたくさん見かけた。イースター(復活祭)休暇でアイルランドの学校は2週間もお休みだったのだ。
日本では新学期、新入社の時期。まだ慣れないスーツを着て通勤を始めた人もいるんだろうな。今年は桜の開花が遅くて埼玉の実家の辺りでは今ごろ満開だと聞いている。
ダブリンではあまりスーツ姿の人を見かけない。毎日スーツで出勤するのは金融機関や省庁で働く人くらいだ。銀行員でもネクタイをしていなかったりする。
1年半ほど前に久しぶりに日本に帰国したとき、駅の近くや街なかでスーツ姿の男性たちが大群を成しているのが目についた。ダブリンではそもそも日本人男性は少数だし、いても私の知り合いは会社勤めでない人や学生さんが大半なので、日本のいかにも「サラリーマン」然としている人たちが何だか新鮮に映ってしまった。
私が東京で就職した90年代には「カジュアルフライデー」という取り組みがあった。私の会社ではほかの会社と同様に特にそれは盛り上がらず、いつの間にか消えてしまったけれど、私が日本を離れてからは「クールビズ」が浸透したようだ。夏場はネクタイ姿の男性は少なくなったのだろうか。
「こっち(アイルランド)の人ってあまり背広着ないよね」とダブリンに数年住む日本人に言ったことがある。すると、「『せびろ』って何ですか」と返された。私より一世代下の人だ。
私も言いながら「古いかな」と思ったが、「背広」という言葉がピンとこない世代の人がいることが少しショックだった。
子どものころ、「ベスト」のことは「チョッキ」と言っていたし、「タートルネック」は「とっくり」だった。「マフラー」のことを「襟巻き」と言うこともあった。「背広」も確かに昭和感を漂わせている。
平日朝 8時過ぎ、仕事に向かうバスの中で。スーツ姿は皆無、そもそも車内はガラガラです。