今日は母の日。アメリカや日本と違って3月にあり、第何日曜日と決まっているわけではないのでややこしい。

アイルランドでは、イースター(復活祭、今年は3月31日)までの四旬節(レント Lent)の4回目の日曜日が「Mother’s Day 母の日」と定められている。四旬節というのは、復活祭前日までの46日間から日曜日を除いた40日のことで、この時期に荒野をさまよったイエス・キリストの苦難と断食を記念して、古代や中世の人たちはこの期間は肉食、乳製品、アルコールなどを絶っていた。その厳格な日々に一日休憩を与えたのが母の日になり、聖母マリアを礼拝する特別なミサが行われたそうだ。

この風習は最近まで残っていて、四旬節の期間は酒やタバコなどの嗜好品を絶つ人が多かった。夫が子どもだった80年代は、学校では子どもたちにこの期間お菓子を食べないように指導したらしい。

母の日に関しては、今はアメリカ文化の影響を受けて、実家に帰って家族で食卓を囲んだり、母親にカードや花束やちょっとしたプレゼントを贈るという日になっている。カードを送りそこなった夫は、母親に夜電話をするそうだ。

私は「お母さん」は Mum とつづるものかと思っていた。イギリス英語ではそう書くし、アイルランドは基本的にイギリス式のつづりを使う。だがあるとき、夫や友人たちは Mam とつづっていることに気がついた。

北ダブリンにスタジオを構えるアーティスト Aisling が作るお母さんへのバースデーカードは「Mam」。 

2年ほど前、アイルランドの成人は自分の母親をどう呼ぶかという調査を iReach という機関が行った。結果は以下のとおり。

  • Mam  31パーセント
  • Mum  23パーセント
  • Mom  12パーセント
  • Mammy 12パーセント

地域差もある。アイルランドの北部のアルスター州(英国領の北アイルランドに入る6県を含む9県からなる地域)では、Mum が53パーセントと過半数だった。

ダブリンでは Mam が27パーセント、Mom が26パーセントとほぼ同数。アメリカ英語では Mom なので、ダブリンでは特にアメリカ風の発音をする人が多いということか。そして Ma (マー)と呼ぶ人が14パーセントいた。確かに、どっぷりダブリン出身の人たちが「My ma(うちのお母さん)」と言っているのを耳にすることがある。しかも my は限りなく「ミィ」と発音するので「ミィマー」と聞こえる。

  • アイルランド資本のスーパー Dunnes Store では Mum でした。

Mam も Mom も Mum も、発音は微妙に違う。それを言い分けるのは私には難しいが、自分の母親はもちろん英語でマムなんて呼ばないし、義母は名前で呼ぶので、「どのマム」問題が浮上することはない。人に母親の話をするときには Mother と言えばよい。でもアイルランド人に「お母さんをどう呼ぶ?」と聞いてみると面白いかも。