於ロンドン2023 : 民族と戦争と芸術①
11月中旬、ロンドンに数日間行ってきた。以前はオイスターカードを使って交通機関を利用していたが、今はクレジットカードをピッとかざすだけで地下鉄もバスも乗れる。ダブリンとは雲泥の違いだ。
ロンドンは、新型コロナが少し治まった2年前に訪れている。今回の目的のひとつはモスクワ出身のピアニスト、ニコライ・ルガンスキー Nikolai Lugansky の演奏会だ。
ルガンスキーは何回も日本に来ているが、2021年には新型コロナの影響で来日公演は中止になった。さらに昨年5月には予定していた都響との共演がキャンセルされた。都響のウェブサイトの「ソリスト変更のお知らせ」によると、「現下の諸状況に鑑み、双方で協議を重ねた結果」の決断らしい。
その頃私はブダペストに休暇で行っていた。大好きなロシア人ピアニストのダニール・トリフォノフ Daniil Trifonov がブダペストでオーケストラと共演するというので、その日程に合わせて旅行を計画した。しかし、彼は体調不良のために急遽演奏を見合わせることに。演目は変更され、彼の代わりにオーケストラと共演することになったのは、ピアニストではなくウクライナ人のバイオリニストだった。ダニール、本当に病気だったのだろうか。コンサート会場で私は複雑な気持ちだった。
さて、ロンドン。ルガンスキーが演奏をするウィグモアホールは Marylebone という界隈にある。会場からすぐのところに気になる店があったので、コンサート前に寄ってみた。
イスラエル出身の有名シェフ、ヨタム・オットレンギ Yotamu Ottolenghi の店のひとつ。イギリスで中東料理ブームを巻き起こした彼は、アイルランド人男性と結婚してロンドンに住んでいる。
バナナケーキとオレンジの効いたアーモンドチョコレートケーキをテイクアウト。
ロンドンの老舗のコンサートホール、ウィグモアホール Wigmore Hall。イギリス国内外のトップクラスの音楽家の演奏が聴ける。静岡出身のピアニスト、内田光子も最近ここで演奏した。
ルガンスキーは特にラフマニノフの演奏で名高い。今回の演奏プログラムはすべてそのラフマニノフの作品だった。ロシア人の手によるロシア人作曲家の音楽を聴けたことだけでも感慨深かった。