「H」をエイチと言わない人たち
アイルランドに住んでわりとすぐに気がついたことがある。アルファベットの読み方が何だか変わっているのだ。
まず、「R」の発音。
「アール」ではなく、私の耳には「オーア」「オール」のような発音をする人がかなりいる。口の開け方は「ア」を言うときのように大きめで、口の上部から発声するが、言うのは「オ」のようなのだ。だから「R」の出だしが「オ」、あるいは「ア」と「オ」の中間のように聞こえる。
ただ、「R」の読み方は人によって違う。いまだに世間を騒がしているアイルランドの公共放送 RTÉ では、ニュース番組の中でリポーターが最後に自分の名前といっしょに「RTÉ」と必ず言うので、「R」をどう言っているか耳を澄ませてみてほしい。
それから「H」の発音。
これは「エイチ」ではなく「ヘイチ」。英国系アイルランド人(アングロアイリッシュ Anglo-Irish)や、親が外国人だったりすると「エイチ」と言う人もいるが、たいていの人は「ヘイチ」と発音する。
例えば HR と略される「人事 Human Resources」を口にするとき、「人事(部)に相談してみたら。Talk to HR.」は「トーク・トゥ・ヘイチアール」。これに R の発音のバリエーションも加わって、「ヘイチオーア」だったりすることも。日本ではアメリカ英語やイギリス英語を教わることが多いと思うので、アイルランドの英語の発音は何だか新鮮で面白い。
考えてみれば、H の入っている単語は have ハヴ、hill ヒル、Hoover フーヴァー(掃除機)、head ヘッド、 home ホームのように、ハヒフヘホの発音だ。だからアルファベットも「ヘイチ」と発音する方が理にかなっているのかもしれない。「エイチ」だと無声音で、H をサイレントレターとして読まないフランス語のようになる。
アルファベットの「H」をヘイチと発音するのは何もアイルランドだけではなく、例えばオーストラリアでもそう発音する人たちがいるらしい。ただ、これは19世紀半ばから20世紀初頭にかけてアイルランドのカトリック教育者によってオーストラリアに持ち込まれ、今でもその影響が残っているからだという。
どうしてアイルランドでは「ヘイチ」なのかという疑問は解消されないが、「エイチ」よりはっきりしているし、「A エイ」と区別しやすいので助かる。
私の名前には「R」も「H」も入っている。職場で小包などを受け取るときや電話でメールアドレスを伝えるときなど、自分の名前を口頭で綴る機会がけっこうある。そのとき「H」は必ず「ヘイチ」と言い、「R」はそのときの気分によって変えている。
夕方、セント・スティーブンス・グリーン公園 St Stephen’s Green の木陰で一休み。サンドイッチなどを食べている人も多いので、カモメが相変わらず目を光らせて餌を狙っています。
9月に入って続いた暖かい気温は今日まで。数日前は26度まで上がり、しかも湿気(しっけ)が高かったので暑かったなあ。わが家の前庭のリサイクル用のごみ箱の上で、近所の猫がゆったりと日向ぼっこ。