ダブリンで乳がん検診と骨密度検査を受けた
HSE(Health Service Executive 国営医療サービス)から乳がん検診の案内の手紙が届いた。数週間後の予約日時もすでに記されている。場所は在アイルランド日本大使館からすぐのところにある専門施設だ。
検診当日、Breast Check と大きく書かれた建物に入ると、中は開放的な空間の待合室になっていた。20脚ほどの椅子に座っているのはほんの数人で、男性もいた。男性もマンモグラフィを受けることがあるからだ。
アイルランドでは50歳から69歳までの女性は、2年に一度無料でマンモグラフィ検査(乳房X線検査)が受けられる。でも50歳からでは遅いように思う。日本では40歳から乳がん検診を受けることが奨励されているし、アイルランドで40代で乳がんになった女性は私の身近に数人いる。だから私は念のため、定期的にかかりつけ医に触診をしてもらっている。
聖ヴィンセント大学病院 St. Vincent’s University Hospital の敷地内に Breast Check Merrion Unit がある。ダブリンの街中から南東の方角に5キロほど。
受付で問診表を渡されて記入していると、ものの数分で名前を呼ばれて個室に通された。マンモグラフィ検査そのものは10分程度で終了。南アフリカ出身だという女性の看護師と少しおしゃべりをし、受付にあいさつをして外に出ると、建物に入ってからまだ20分ほどしか経っていないことに気づいた。何という効率のよさ。
翌週には結果の通知も届いた。何の異常もないということで、まずは安心する。
新年早々、骨密度検査も受けに行ってきた。去年かかりつけ医にビタミンDをもっと取るようにアドバイスされたのだが、そのときに「骨密度も測ってみる?」と聞かれたので気軽にうなずいたら、検査のできる病院に照会の手紙を送っておくと言われた。そんなやりとりをすっかり忘れていたころに、聖マイケル病院 St. Michael’s Hospital から案内が届いたのだ。
聖マイケル病院はダブリン郊外のダン・レアリー Dún Laoghaire という町にある。この町の名前は私はいまだに正確につづれないのだが、私だけではなく、たいていの外国人が最初はダン・レアリー(リアリー)という読み方やつづりに苦労する。
2004年にダブリン在住のセシリア・アハーンが書いた小説『P.S. I Love You』が出版され、ベストセラーになった。作者は当時のアイルランドの首相バーティ・アハーンの娘だということでよけいに話題にもなったが、この本は2007年にハリウッドで同名タイトルで映画化。ヒラリー・スワンクが主演し、役柄もアメリカ人になってしまった。その主人公がアイルランドに旅をし、「Dún Laoghaire の宿に泊まっている」とジェラルド・バトラー演じるアイルランド人青年に話すくだりがある。もちろんうまく発音できず、「ダン・ラウガヘリー?」と言っていたのが笑いを誘った。
骨密度検査 BMD(Bone Mineral Density) Test は DEXA Scan とも呼ばれ、アイルランドでは女性は65歳、男性は70歳以上が受けることが推奨されている。これも日本と比べると遅いのでは。
「カルシウムのサプリを摂取している人は、検査の2日前からは取らないでください」と手紙に書いてあった。私はビタミンDのサプリしか取っていないので、当日の朝も普通に一錠飲んだ。
ところが聖マイケル病院での問診中、看護師が「ビタミン剤にもカルシウムが含まれている」と言ってきた。ただ、マルチビタミン剤の場合のようで、私の場合は問題ないというので無駄足を踏まずにすんだ。
留め金やジッパーなどの金属がついていない服を着てきたので、そのまま検査台に横たわった。足や腰の上を機械がグイーンとゆっくり通過するあいだ、しばしリラックス。すると看護師が「ちょっと待ってて」と言い残して部屋を出ていき、すぐに別の看護師を連れて戻ってきた。コンピュータを見て二人であれやこれやと言い合っている。そのうちに私の方に向き直り、「足をやり直ししたら終わりだから」とまた左足を固定した。データ送信か何かがスムーズにできなかったようだが、大した問題ではなさそうだ。
検査後、3人でまた少し世間話をする。担当の看護師はフィリピン出身だという。もう一人も話し方からするとアイルランド出身ではない。聖歌隊で歌うのが趣味なのだそうだ。アイルランドの医療は様々な国籍の人に支えられていることを身をもって感じながら病院を後にした。