ザグレブのクリスマスマーケットとワイン付き絵画教室
11月の終わりから12月頭にかけて、夫とザグレブに行ってきた。さて、ザグレブはどこの国の首都でしょう。
答えはクロアチア。アイルランド時間12月5日の午後3時過ぎの今まさに、サッカーワールドカップのテレビ中継で、16強同士としての日本とクロアチアの試合を観ながらこのブログを書いている。日本チームが追い込まれるのが怖くて正視できない。
ザグレブに行った理由は、仕事の忙しくない時期にライアンエアーで安い航空券が出ていたから。5月にハンガリーのブダペストに行ったので、同じくオーストリア=ハンガリー帝国時代の面影が残るザグレブも興味深いかも、と思った。
同じクロアチアでもアドリア海沿岸のドブロブニクやスプリットなどは、「サンホリデー Sun holidays」好きなアイルランド人にも人気のリゾート地。でもクロアチア北部の内陸部にある首都ザグレブを訪れたという人はあまり知らない。
クロアチアの人口は約390万人(2021年現在)で、その約4分の1がザグレブ都市圏に住んでいる。人口約500万人のアイルランドでダブリン首都圏に人口が集中している割り合いと似ている。国の面積はアイルランドの8割ほどだ。ちなみに日本の国土はアイルランドの5倍以上あり、日本は決して小さい国ではない。イギリスやイタリア、ドイツより大きいのだ。中国やアメリカなどの大国ばかり気にしていると、小さく思えてしまうのだろう。
この時期ヨーロッパ各地で開かれるのはクリスマス市だ。ザグレブは大陸性気候に属するため夏は暖かく冬の寒さが厳しい。冬の風物詩として町を挙げてイルミネーションを灯して幻想的な空間を作り上げ、市民や観光客の目を楽しませている。
ザグレブ中心地のイェラチッチ広場 Ban Jelačić Square。『Advent Zagreb』の Advent とは、キリスト教西方教会でイエスの到来を待つ期間のこと。クリスマスの4つ前の日曜日からクリスマスイブまでで、日本語では待降節(たいこうせつ)や降臨節(こうりんせつ)と呼ばれる。この広場でも午後遅くから売店が出てクリスマスマーケットが開かれる。
イェラチッチ総督の騎馬像の前に現れたのは、クリスマスが舞台のバレエ『くるみ割り人形』に出てくるような兵隊さん。この兵隊のモチーフはクリスマスの時期あちこちで見られる。イェラチッチ総督は、オーストリア帝国時代のクロアチアで19世紀半ばに活躍した軍人、政治家で、現在のクロアチアの国民的英雄だそうです。
坂の多いザグレブ。高台から2つの尖塔のあるザグレブ大聖堂(聖マリア被昇天大聖堂Zagrebačka katedrala)を望む。クロアチアでは2020年に2つの大地震があり、一部の建物が破損するなどの被害を受けた。現在も復旧作業を行っているところが多く、この大聖堂もその一つで、中には入れなかった。
ザグレブではただ数日のんびりしようと特に予定は立てていなかったのだが、ひとつだけ事前に予約していたことがある。ワインを飲みながら絵を描こうという面白いコンセプトのアートクラスだ。絵画の心得は全くない私たちでも、ワインの力を借りたら何とかなるのではないか。
私たちが教室を訪れたのは、ザグレブ到着初日の夕方。アイルランドとクロアチアの時差は1時間なのだが、スマートフォンの時間がクロアチア時間にすぐに変更されなかったため(言い訳ですが)、私たちはクラスに1時間遅れてしまった。ドアを開けると15人ほどの参加者が一斉に私たちの方を見る。主催者の2人は「もう来ないかと思っていましたよー」と快く私たちを迎え入れてくれ、「みんなもう半分くらい描いたところだけれど、すぐ追いつけますよ」と流ちょうな英語で励ましてくれた。
建物の半地下にある Pineli & Vino という絵画教室。ザグレブはこのようにグラフィティが多い。
参加者は30代から50代くらいの女性が多かった。先生がお手本の作品を描き進めながらテーブルを回ってアドバイスをしてくれる。毎回絵の題材は決まっていて、この日はお手本にのっとって「雨のパリ」を描くことになっている。
私たちはこんな風にスタートした。パレットにはアクリルカラーの絵の具が予め用意されていて至れり尽くせり。先生が「次は一番小さい筆に白い絵の具を付けて、こんなふうに筆を斜めに動かして雨の感じを出していきましょう」と丁寧に説明してくれる。
クラスは終始リラックスした雰囲気だった。参加者の年代がよく知っているロックやポップスの曲がかかっていて、時にはサビの部分を歌いながらみんなノリノリで絵筆を動かしていた。教室の前方にワインが置かれたテーブルがあり、いつでも自由にワインを注げる。クロアチアは知る人ぞ知るワイン大国で、良質なワインを生産しているが、アイルランドではあまり手に入れることができない。ここで出されたワインがクロアチアワインかどうか調べるゆとりはなかったが、恐らくそうだったのでは。
出来上がり!
最後に参加者全員で記念撮影をしたあと、「誰でも絵は描けるもんだね」とほろ酔い加減のまま絵画教室を後にした。近くのズリニェバッツ公園 Zagrebački parkovi で開かれているクリスマスマーケットまでは歩いてほんの数分だ。
ザグレブのクリスマスマーケットは、2016年から3年続けてヨーロッパの「ベストクリスマスマーケット」に選ばれたほど。
ホットドッグを食べながら楽隊の音楽を聴く。抱き合って踊っているカップルもいて幸せな気分になる。
手作りの石鹸やキャンドル、アクセサリーなどの売店も多く出ている。私はこの売店でハート形のピアスを購入した。物価が思ったより高かったザグレブ(リゾート地はもっと高いらしい)で、この店のアクセサリーは約380円からと破格の値段だった。
私たちの初めての絵画作品「雨のパリ」は小さいスーツケースに入れて家に持ち帰った。今はピアノの上と居間の棚に鎮座している。実は次の旅行先はパリ。私の出張にかこつけて、来年1月に行ってきまーす。