4年半ぶりに日本に帰国するというと、アイルランドの友人たちは私が日本で何が食べたいのかに興味津々だった。「やっぱり鮨?」と聞かれることが多かったので、だんだん私もその気になってきた。

私の「久々に日本で食べたいもの」リストの上位は、ウナギと天ぷら、あとは秋刀魚やしめ鯖などの魚料理だった。

母に焼いてもらったサンマ。秋にゆっくり日本に帰ったのは久しぶりなので、サンマは十数年ぶり?ピーマンの肉詰めもきんぴらごぼうも食べられて幸せ。

家族と行った「もりもり寿し」。北陸・金沢を中心に展開する回転寿司チェーンだ。ノドグロ(赤ムツ)という昔は聞いたことのなかった高級魚も初めて食べた。

「もりもり寿し」のタッチパネル画面で注文してしばらくすると、ベルトコンベアに3両の連結車両のように寿司が到着。かなりのスピードだ。慌てて皿を取って赤いボタンを押すと空の寿司車両がシャーっと去っていく。あー面白かった。もう完全に外国人感覚で楽しんだ。

折りしも、私が日本で羽を伸ばしていた10月11日に日本の水際対策が大きく緩和され、それまで一日あたり5万人が上限だった入国者数が撤廃された。団体ツアー以外の外国人観光客も2年半ぶりに日本を訪れることができるようになり、テレビではそういった観光客を密着取材していた。彼らが行きたいところ、食べたいものは私とそう変わりはない。

神戸に小旅行に行くために羽田空港を利用した。時間があったので「羽田 寿司幸(すしこう)」でゆっくりお昼を取ることにした。

銀座6丁目にある「銀座寿司幸」が監修する姉妹店だそうである。羽田空港店はお手頃な価格設定。

ランチセットの「翼にぎり」1680円。約12ユーロ。安~い。

まだ空いている店内、カウンターに案内される。この店は「江戸前寿司」とうたっているが、はて江戸前寿司とは一体、と気になっていたので、目の前でタネの調理をしている職人さんに聞いてみる。

「要するに、昔ながらのやり方で作っているということです」と親切に教えてくれる。冷蔵庫などがない昔、酢締めやしょうゆ漬けなど生魚に様々な加工を加え、日持ちがする工夫をしていた。その調理方法を受け継いでいるので江戸前寿司。江戸時代には東京湾(江戸湾)で獲れたものだけを出していたというが、今はもちろんそうではない。

私がアイルランドから来たと話すと、「うちのお店で使っているサーモンはアイルランド産ですよ」と言うので驚いた。

「アイルランド産のものは一年を通して良質ですね。」

何だか私がほめられている気がする。確かにアイルランドで食べるサーモンは日本で食べるトロのように脂がのっていて食べ応えがある。それが東京の江戸前寿司のお店で出てくるなんて、不思議だ。

島国アイルランドで獲れる水産物は、近年国際市場で実績を上げているらしい。オーガニックサーモン、サバ、ダブリン湾の手長エビ Dublin Bay prawns などの輸出が特に伸びているそうだ。世界約70カ国と取り引きをし、日本はもっとも成長著しい輸出相手国のひとつ。アイルランド国内でもっと需要が増えて、ダブリンでもおいしい魚料理が味わえるようになってほしい。