10月上旬から約2週間、日本に帰国した。7月に航空券を買って以来、楽しみで楽しみで心が踊っていたが、日本の厳しいコロナ対策の中、何も問題なく無事に帰れるかどうか一抹の不安もあった。

帰国のひと月ほど前の9月7日から、日本入国にあたっての制限が緩やかになった。新型コロナウイルスの帰国前検査と陰性証明書の提示が免除されたのだ。「やった!」とガッツポーズをしたくなるほど喜ばしいニュースだった。

そしてダブリンを発つ数日前、MySOS というアプリ上であらかじめ検疫手続きの一部を済ませておいたので、成田に到着してからは「登録完了、空港検査と待機なし」を意味するスマホのアプリの画面を係員に提示するだけでよかった。青色の画面はまるで江戸時代の関所を通る通行手形のような威力を発揮。さっとスマホを振りかざし、ほとんど立ち止まることなくすたすたと歩いて全ての手続きを済ませることができた。

帰ってきましたー。ここ十数年は帰国時に夫が同行することがほとんどだったが、今回は私ひとり。外国人向けのこういう看板も私に向けて「お帰り」と言ってくれているようで嬉しかった。

アイルランドから日本へは直行便がない。これまで日本に帰るときはエールフランス(パリ経由)、KLM(アムステルダム経由)、トルコ航空(イスタンブール経由)などの各社を使ってきたが、今回は初めてエティハド航空を使うことにした。

現在ヨーロッパのどの航空会社もロシア上空は迂回しているので、日本・ヨーロッパ間の飛行時間は長くなっている。それならもともと時間のかかる中東経由で行っても大した違いはない。何より、破格の値段だった。往復約560ユーロ、購入時の相場では日本円で約82000円になる。燃料サーチャージ(追加料金)もなし。こんなに安く日本に帰れたことはない。

エティハド航空はアラブ首長国連邦(UAE)の航空会社で、アブダビ経由である。往路のダブリンからアブダビは7時間15分、アブダビから成田空港までは約10時間かかる。復路ではそれぞれの飛行時間がさらに少しずつ長くなる。アブダビでの乗り継ぎ時間は往復とも2時間ほどで、時間を持て余すことも気が焦ることもなく理想的だった。

機内の座席は3‐3‐3間隔のレイアウト。座ると足を完全に伸ばせるスペースはないが、常に通路側の席を確保したので、辛くなると席を立ってストレッチ。

こちらは帰国中に羽田空港から神戸空港に飛んだときのスカイマークの機内の座席。非常口に近い座席だったので足元がエティハドのエコノミー席よりも広々していて快適だった。

アブダビ空港の店。本の表紙のように白い民族衣装を着ている男性が空港にも機内にも見られた。

エティハドの機内食は、なぜか行きはイマイチだったが帰りはよかった。写真はダブリン・アブダビ間で出た「アラブ風オムレツ」で、これが今回食べた機内食の中で一番おいしかった。メインはトマト味の羊肉の煮込み、ローストポテト、オムレツ、そしてアラブのパン(ピタパン)とボリューム満点。アブダビ・成田間は日本食を選んだ。

客室乗務員は皆英語が堪能で(当然だが)、親しみやすそうな人が多かった。航空客室乗務員は CA(シーエー)、キャビンアテンダントと呼ばれるが、この言葉が和製英語だと知ったのはごく最近だ。英語では通常フライトアテンダント flight attendant で、全体としての呼び名はキャビンクルー cabin crew だ。

成田に着陸してすぐに、日本人CAによる機内アナウンスがあった。

「到着地、東京のただ今の時刻は午後零時、気温は…」

え、「午後零時」ってどういうこと?と手首にした Fitbit に目をやるが、アブダビでスマホとシンクロしたときのままなのでまだアブダビ時間のようだ。今何時なのか一瞬わからなくなる。でも正午か深夜零時かというのであれば、日本は正午のはず!

「午前12時って言ってよー」と思わず声を上げたくなった、4年半ぶりの帰国の幕開けです。

正午は「午前12時」だが、一般には「午後零(0)時」も通用しているらしい。でも私には何だか気持ちが悪い言い方だ。写真は日本語を教えるときに使えるかなと思って百円ショップで買った「がくしゅう時計」。