アイルランド人はビタミンDが不足傾向にある、というのは以前から知っていた。そうだよね、お日様があまり長い時間は出ていないからね、と他人事のように思っていた。

ところがこの春にした血液検査で、このビタミンDが少し足りないと言われてしまった。ビタミン剤を処方され、以来、毎朝ひとつぶ服用している。

処方されたビタミンB3 剤。一日の摂取量は 800アイユー(国際単位 IU: International Unit)。これは 0.02 mg ミリグラム(20 µg マイクログラム)にあたる。IU「国際単位」は脂溶性ビタミンなどの活性を示す単位で、体内での効力でその量を表すそうだ。

ビタミンDはご存じのとおり、骨の形成や成長のうえで重要なカルシウムの吸収を助ける栄養素。骨粗しょう症の予防だけでなく、「糖尿病の予防」「ガンの発生を抑制」「免疫力の向上」などにも効くとされている。大きな特徴は、太陽光を浴びて UVB(紫外線B波)という波長の紫外線が肌に触れることで体内に形成されることだ。

しかしアイルランドは、日本に比べるとかなり日照時間が短い。年間1100から1600時間で(気象庁メット・エアラン Met Éireann のウェブサイトより)、ダブリンでは1440時間という資料もあった。

日本の平均年間日照時間はどうかというと、約1915時間(気象庁の1991年から2020までの全国都道府県の平均値)。もっとも短いのは秋田県の1527時間で、これに青森県の1589時間、山形県の1617時間、新潟県の1639時間と続く。日本海側の地域には太陽があまり降り注がないようだ。そしてアイルランドはそうした日本海側よりもさらに年間日照時間が短いということになる。太陽を求め、南フランス、スペインやポルトガル、はたまたギリシャなどのビーチに行くいわゆるサンホリデー sun holiday が人気があるのはうなずける(今年はみんなほぼ普通に旅行しています)。

ビタミンDは正常な骨格と歯の発育を促すため、近年アイルランドの国営医療サービス(HSE)は、4歳までの乳幼児はビタミンDの栄養補助食品(サプリメント)を取るように指導してきた。これに加えて2020年11月に「65歳以上もビタミンDのサプリを取るように」という指南を発表。健康な骨を生涯にわたって維持することは、幸せで充実した人生につながりますよ、ということだ。

ビタミンD入りをうたった牛乳。1リットル約230円。今年に入って乳製品の値段が軒並み上がった。

私のよく行く大型スーパーの鮮魚コーナー(fishmonger フィッシュモンガーは魚屋のこと)。夕方にこの写真を撮ったせいもあるが、普段から扱う魚介類の種類は多くない。鮭 salmon、タラ cod、メルルーサ hake、キス whiting、マス trout、ホタテ貝 scallop、ムール貝 mussels、海老 shrimp、鮭やニシン kipper の燻製ぐらいだ。ときどきマグロ tuna も加わる。

陳列棚に並ぶのはほとんど鮭、タラ、サバ mackerel、マス。燻製類(スモークサーモンなど)とフィッシュケーキ(マッシュポテトと魚のコロッケもどき)のような加工食品が陳列棚の 3分の2 を占める。

ビタミンDは穀物や野菜、豆類、イモ類にはほとんど含まれていない。多く含まれている天然食品は、魚類(しらす干し、鮭、サンマ、いくら等)やきのこ類(きくらげ、干ししいたけ)などに限られているそうだ。含有量が一番多いのはアンコウの肝らしいのだが、アイルランドではそんなものはまず見ない。まあ、日本でも「あん肝」を食べることはそうないだろうが、一般的にアイルランドよりも魚は手に入れやすく、食べる機会も多いのでは。

アイルランドでは日照時間の短さもさることながら、日常的に食品から摂取することも容易ではないため、ビタミンDが欠乏しがちということなんでしょうね。長年住んでいたら、私もそうなるのはやむを得ないのかもしれない。

日本でもビタミンDが欠乏している人は増えているという。日光浴の習慣はないし、外に出るときは日焼け止めから帽子から日傘からと紫外線対策が万全すぎて、ビタミンDが十分に生成できないからだ。日光と食事とサプリメント、上手に取り入れて骨の老化を防ぎたい。そうそう、骨密度 bone density の検査もしなければ…。