私は全くコーヒーのことがわからないが、飲むとしたらカフェラテ。朝の休憩時間によく職場から一番近いカフェに行ってラテを頼む。

長年そのカフェの常連なので、「いつものお願い。The usual, please.」と言うだけで注文は済む。新しいスタッフが入ると、古株のスタッフが私の好みを教えてやっているのが耳に入る。

「Sサイズのラテ、テイクアウト、ワンショット(コーヒーの量)、普通のミルク(アーモンドミルクや豆乳を頼む人も多いので)。Small latte, take-away, one shot, normal milk.」

新しいスタッフが私の顔を見てすぐに「いつものね」とコーヒーを淹れられるようになったら、彼らに名前や出身を聞いたり、天気や客足について軽く世間話をしたりできるタイミングが来たということになる。

観光客が集うダブリンのテンプルバー地区。3月17日の聖パトリック・デーが例年アイルランドの観光シーズンの始まり。4月の復活祭の休みも手伝って、海外からの観光客が増えている。

このカフェでは、コーヒーやケーキだけではなく、ランチも提供している。人出は多いのに客足が伸びないと嘆くスタッフに、「売れ残りのサラダとかはどうするの」と聞いてみた。どうせ廃棄するしかないんだろうなと思っていると、「最近、Too Good To Go っていうアプリと提携したんだよ」という答えが返ってきた。(ちなみに英語ではアプリケーション Application の短縮はアップ App、複数形はアップス Apps だ。 )

Too good to goとは「捨てるにはよすぎる」、つまり「捨てるには惜しい、もったいない」という意味だ。それが外食産業の食品廃棄の問題と結びついて、こういうシステムをもつアプリが生まれた。

  1. 加盟しているレストラン、カフェやスーパーは、翌日にかなりの売れ残りが出そうであれば、アプリで値段、受け取りの時間帯、そして何人分提供できるかを告知する。
  2. その告知を見た客は、アプリを通じて注文、オンライン決済をし、指定の時間帯にその店に受け取りに行く。
  3. もし売り切れになって残り物が出なければ、注文はキャンセルとなり、受け取り時間帯前に客に連絡が行く。後日返金される。

「常連さんにこのアプリのこと教えてもらったんだけど、こっちとしては売れ残りをさばけるし、客にとってはすごくお得な買い物だしで、ほんとウィンウィン win-win(どちらにも利益がある)だよ」とスタッフ。スープとメインの料理、サラダと焼き菓子を詰め込んだお得なセットを4.99ユーロで提供しているそうだ。ただしメニューは「サプライズバッグ」として客は選ぶことはできない。

Too Good to Go 加盟店の目印は右のロゴステッカー。

2016年にデンマークで誕生した Too Good to Go は、現在ヨーロッパ、北米の17カ国で展開しており、アイルランドは去年10月に加わった。2月までに加盟店は300店舗以上になり、登録者数は5万人以上(アイルランドの人口の1%)。もうそんなに広まっているとは知らなかった。

家庭や外食産業、食品製造業などで廃棄される食品は、可燃ごみとして焼却され、二酸化炭素を排出する。その量は世界の全排出量の約8%になるという。廃棄する食品が減れば、CO2の排出量も削減できるわけだ。Too Good to Go は、ダブリン展開から4カ月弱で62,500キロのCO2排出量を減らした。これはダブリンとロンドン間の飛行581回分にあたるそうだ。年に約20万トンの食品が廃棄されているアイランドの外食産業に(2018年)一石を投じているのである。

私も早速アプリに登録し、どんな店が参加しているのか見てみた。すると、よく行くカフェ、一度食べてみたかったお店が何店も加盟していて、販売価格の3分の1ほどの値段でサプライズバッグを提供していた。これはもう、試すしかない。

日本でも食品ロスは大きな問題になっていると思う。このアプリは、ユーザーが店の指定の時間(30分か1時間ほどの時間帯)に注文を取りに行かなければならないため、職場や家から徒歩圏内であちこち行けるサイズの街にはちょうどいい。今やダブリンだけではなくコーク、ゴールウェイでも導入されているそうだ。

「もったいない」を減らしているという実感も得られ、好きな店の料理がお得に食べられるこのアプリ、機会があればぜひお試しあれ。

ダブリンだけで何店舗もあるカフェチェーン KC Peaches や Caffè Nero も加盟している。テンプルバー入口にある KC Peaches で4.99ユーロでゲットしたサラダやパスタ、クロワッサンやデザートなど。

家族経営のキョーズ・カフェ Keogh’s Cafe はトリニティ大学やグラフトン通りからすぐ。4.99ユーロでこれだけのマフィンや菓子パンがもらえてびっくり。この日はたまたま売れ残りが多かったので「特別サービス」だった。

キョーズ・カフェの店内。サービスはいまいち遅いが、おいしい。

前から試したかったダブリンの老舗ドーナツ屋 The Rolling Donut。イースト生地からではなくサワー種(ドウ)sourdough から作られている。5.99ユーロで6個。一つひとつがとても大きくて、口を大きく開けないと噛みつけないほど。普通に買えばひとつ3ユーロです。