国勢調査でわかる「アイルランドの今」
今日は聖パトリック・デー。5世紀にアイルランドにキリスト教を広めた聖人の一人、聖パトリックの命日であり、1903年からアイルランドと北アイルランドでは国民の祝日となっている。
3月17日前後の数日間は、「St Patrick’s Festival 聖パトリック・フェスティバル」としてアイルランド中でパレードや音楽などの様々な行事が行われる。アイルランドで育ったならば、誰でも地元や近隣の街のパレードを見に行った経験があるものだ。私も数回ダブリンのパレードを見たが、沿道に並ぶ人々の熱気に圧倒された。みんな緑色の服や帽子を身にまとい、顔にペイントをしたりしていた。アイルランド人はお祭りの楽しみ方を心得ている。
去年とおととしはパレードなどは中止され、オンラインでのイベントが中心となった。今でもまだまだ新型コロナウイルスは身近にあるが、2月下旬に感染症対策のいろいろな制限がなくなり、人々は再び外出を楽しむようになった。聖パトリック・フェスティバルのパレードも各地で復活する。
アイルランド国旗やシャムロック(Shamrock アイルランドの国花である小さいクローバー)、レプラコーン(Leprechaun アイルランドの妖精)などの飾りつけで街は緑一色だ。私のよく行く AIB銀行の支店でも今週はレプラコーン人形が迎えてくれた。
今年は3月17日だけでなく、翌日の18日も Day of Remembrance and Recognition という祝日になった。これは新型コロナのために国民がこれまで払った努力や働きを認め、また亡くなった人たちの追悼記念のために、アイルランド政府が「今年限り」で設置した祝日だ。
私は最近忙しかったので今日はパレードはテレビで観るだけにして、自宅でゆっくり過ごしている。数日前に家に届いた『Census of Population of Ireland 国勢調査』の用紙を開いて一つひとつ質問項目を見てみた。
5年に一度行われる国勢調査は、今年の4月3日現在の状況について記入することになっている。本来は去年行われるはずだったが一年延びて今年の実施となった。つまり6年ぶりの調査だ。英語だけでなく、ウクライナ語も含めた22ヵ国語でも用意されているそうだ(日本語版はありません)。
今回の調査内容について話題になっていることの一つは、「あなたの信仰する宗教は何ですか」という質問の変化だ。今回初めて、「if any? もしあれば」という言葉が質問に付け加えられた。さらに、答えの選択肢のトップは「No religion」。前回までの調査ではこの選択肢は一番最後だった。
What is your religion, if any? あなたの信仰する宗教は何ですか(もしあれば)。(Mark one box only) 一つだけ選択してください。
- No religion 無宗教
- Roman Catholic キリスト教(カトリック)
- Church of Ireland キリスト教(アイルランド聖公会)
- Islam イスラム教
- Orthodox Christian キリスト教(正教会)
- Presbyterian キリスト教(長老派教会)
- Other, write in your RELIGION その他の場合は、記入してください。
以下のように、前回までの調査にはなかった項目も増えた。在宅勤務が当たり前になった現状を反映しているようだ。
- Renewable energy sources 再生可能資源
- Childcare (14歳以下の)児童のケア
- Smoke alarms 火災警報器
- Smoking 喫煙
- Working from home 在宅勤務
- Volunteering 奉仕活動
- Internet access & devices インターネットのアクセス環境と接続機器
- Travel from work/school/college 通勤・通学
この国勢調査の書類は4月中旬に各戸から回収され、6月下旬には一部の結果が発表、来年4月から12月にかけて概要と細かい統計結果が公表される。アイルランドの今が色濃く表れるデータとなるのは間違いない。