アイルランドで一年で最も大きな行事、クリスマスがあっという間に終わってしまった。お店や家のクリスマスツリーなどの飾りつけをしまうのは1月6日ということになっているので、年末年始もまだクリスマスムード満点。日本だったらお正月の飾りつけにさっさと変わっているのだろうけど。

店や家の入口の両側にクリスマスツリーが残っていると、門松のように見えなくもない?これはグラフトン通りからすぐの雑貨屋 Avoca アヴォカ。ロックダウンが緩和されても閉まったままだったが、最近やっと再オープンした。

私と夫のクリスマス休暇は今年は4日間。かなり直前まで迷ったが、結局夫の実家のティペラリーで過ごすことにした。去年の今頃はまだ新型コロナのワクチンが普及していなかったので帰省は諦めたが、今年は義母と義兄はブースター接種済みだし、他家への訪問は最大3世帯まで認められているので(全体で4世帯までが集える)、里帰りが可能になった。

クリスマスといえばクリスマスプレゼント。何を贈ればよいかは10月ごろから実家に電話する度に探り合っているので見当がついている。義母へは折りたたみ傘、義兄へは室内履きスリッパなどで、私たちはパスタマシンなどをお願いした。実用的なものを贈るのがわが家の習慣になっている。

プレゼントをダブリンのいろいろな店で買ったのは12月中旬。清算してレジを離れるときに店員から「Happy Christmas!」「Have a nice Christmas!」と言われるので「Happy Christmas to you, too!(あなたもね)」と返す。

しばらく会わないであろう友人や同僚とは、クリスマス休暇に入る前に「In case I won’t see you before Christmas, have a great Christmas! クリスマスまでもう会わないかもしれないから、よいクリスマスをね」と言うのが常(つね)だ。クリスマスの代わりに「Happy holidays! よい休暇を」と交わしたりもする。

今年のプレゼントの包装紙は本棚のデザイン。よく見ると本棚のあちこりにクリスマスツリーが描かれている。折り紙で立体の小さなクリスマスツリーを作ってちょこんと飾った。

実家でクリスマスディナーの食卓を囲むのは、義母と義兄と私たち夫婦、そして義母の妹の5人。メインディッシュとなる七面鳥(ターキー turkey)は何キロもあるので、詰め物をしたりオーブンに出し入れしたりするのは実はかなりの重労働だ。体調が優れない日もある義母に代わって、今年は隣家の女性が我々の食べるお肉を焼いて届けることを申し出てくれたという。

七面鳥を焼くストレス(?)から開放され、前菜(スモークサーモンのクリームチーズ巻き)も前日に準備してしまった義母は、クリスマスの朝は例年より気持ちの余裕があったようだ。朝食時もゆっくりおしゃべりをしたのだが、その際に教区の新しい神父の話が出た。

「前の神父は自宅訪問をしなかったんだけどね、新しい神父は、一人暮らしの老人や病人の家を訪問してくれるのよ。そのときに、You need a break(ちょっと休んだら)と言ってキットカットをくれるの」。キットカットチョコレートの Have a break という宣伝文句にかけてのこと。これは断れませんね。

何でも、前の神父はお金を使うことに慎重で、神父の住む司祭館の修理をずっと拒んでいたとのこと。自分のために教区の人々からの献金に手をつけるようなことはしたくなかったからだ。その彼が高齢のために主だった仕事から退き、別の場所に引っ越した。しばらくして司祭館にやって来た新しい神父は、さっさと家の修理をしたという。そんないきさつがあったり、自宅訪問をするしないという主義なども違う二人は折が合わず、教区中がそのことを知っているのだそうだ。新しい神父といっても70代。お互いベテランの神父同士、主義主張が違って当然なのかもしれない。神父という聖職であっても、やはり人間なんだなと思った。

朝食の後、正午から始まるクリスマスのミサに出かけた。義母は人出を避けるために今年は教会から足を遠ざけていたが、クリスマスのミサは欠かしたくない。24日のクリスマスイブの夕方から「クリスマスミサ」は何回も行われるので、一つひとつのミサに来る人数は例年よりかなり少ない。また教会の座席は一列おきにしか座れないようになっており、ソーシャルディスタンスが十分にできるようになっていたので義母も安心した。

教会は実家から徒歩15分ほど。正面からは小さく見えるが、実は奥に長いんです。

教会の駐車場の前にある牧草地。羊が小さく点々に見える。

この回のミサを取り仕切ったのは、何と「前の神父」。今の神父だけでは教区に2つある教会で数回ずつ行われるクリスマスミサは回せないので、彼が手伝っているようだ。クリスマスミサだけ数年おきに出席している私にも見覚えのある顔が祭壇に上がると、義母から朝聞いた話を思い出して思わずくすりと笑ってしまった。

クリスマスの時期の教会に欠かせないのは、イエスの降誕場面 Nativity scene を人形で再現した「Crib クリブ」。クリブは本来は赤ん坊用のベッドのことだが、ここでは赤ん坊のイエスが収まった飼い葉桶のことで、総じてこうした降誕場面の再現がクリブと呼ばれる。

教会の近くには夫の通った小学校があるが、その前にもクリブが。

実家のテレビの前に飾られていたクリブ。

ミサから戻ってクリスマスディナーの副菜の準備に取りかかる。夫は人参や芽キャベツの下ごしらえ、私はテーブルセッティングを義母のお手本の通りにする。

そこへ「Ho ho ho! ホーホーホー」とサンタクロースの笑い声を立てながら隣人が七面鳥を持って到着!隣の家といっても30メートル以上離れているところを、重い七面鳥をオーブンディッシュに載せてしずしずと歩いて来てくれたのだ。

無事にメインディッシュがそろい、叔母も到着したところで、満を持してクリスマスディナーが始まる。前菜、主菜、そしてデザート(ストロベリームースとトライフル)の前にプレゼントの交換もしながら、時間をかけてとにかくたくさん食べた。

義母の妹が作ったトライフル trifle。スポンジケーキにシェリー酒や果物のシロップをしみこませて、カスタードクリームと果物を層状に重ねたもの。上にはクリームがたっぷり、これから最後に刻んだチョコレートをかけて完成。

クリスマスの翌日はおなかをいたわりながら残り物を少しずつ食べ、散歩をしたりしてのんびり過ごした。27日にダブリンに戻り、28日から仕事。同僚と「Did you have a nice Christmas? クリスマスどうだった」と尋ね合う。みな決まったように「食べ過ぎ、飲みすぎだよ」と言いながら、どんなクリスマスディナーだったのかを自慢(?)し合った。

地方でクリスマスを過ごしてダブリンに電車で戻ってきた人たち。プレゼントやクリスマスディナーの残り物が詰まったスーツケースを引いている。

ダブリンのヒューストン駅には映画『マトリックス』の最新作『The Matrix Resurrections』の宣伝が。ブースター接種してから観ようかなー。

クリスマスが終わると、翌年までもう会わない人とは別れ際に「Happy new year!」と言う。どうもまだ私は「あけましておめでとう」イコール「ハッピーニューイヤー」と思ってしまいがちだが、日本語では「年が明けた」ことを祝う新年に言うあいさつなのに対して、英語の happy new year は「よい新年でありますように」と願って年末から言えるあいさつだ。そしてお返しには、「Happy new year to you, too!」か、「このおめでたい日がいく久しくくり返されますように」の意味で「Many happy returns! メニーハッピーリターンズ」と言う。

というわけで、ハッピーニューイヤー!どうぞよいお年を。