「コロナ禍」のもとの日本語
日本のニュースやウェブサイトで「コロナ禍」という文字が目につくようになって久しい。初めて見たときは読み方も意味もはっきりわからなかったし、「うず」の「渦(か)」の間違いではないかと思ったのが正直なところ。それにしてはみんな使っているので、調べてみなければならなかった。
1回目のワクチン接種から約4週間後の6月29日、2回目の接種が無事に終了。集団接触会場で「I got my COVID-19 vaccine」のバッジをゲット!
「禍(か)」は名詞の後に使われると「〇〇による災い、被害」という意味になるそうだ。この漢字を使った言い方で覚えがあるのは、例えば「戦争による被害」という意味の「戦禍(せんか)」。「戦禍を被(こうむ)る」や「戦禍に見舞われる」のように使うが、同じ読み方の「戦火」「戦渦」と使い分けなければならない。
「一部の国だけが戦禍(せんか)を免れた」=戦争による被害
「戦火(せんか)を逃れて田舎に疎開する」=戦争による火災被害
「戦渦(せんか)の中の生活」=戦争による混乱
この「コロナ禍」という言葉の使い方で気になったのは、「禍(か)」を「下(か)」のように使っているケースが多いように思えることだ。つまり「炎天下」の「炎天のもと」や「戦時下」の「戦争中」と同様に「禍」を用いている。
「コロナ禍で自由に外出ができない」?
「新型コロナウイルス禍で衛生意識が高まっている」?
「コロナ禍」が「コロナによる被害」という意味なら、これらは「コロナ禍で」の代わりに、「コロナ禍のもとで」あるいは「新型コロナ(の感染拡大)による影響で」と言うべきでは。
しかし、これは新しい日本語。「三密」という言葉が2020年の新語大賞(小学館の国語辞典『大辞泉』が選ぶ新語大賞2020)に選ばれたことは知っていたが、「コロナ禍」は次点だったそうだ。世の中での使われ方によって、新しい定義が生まれるのかもしれない。
コロナ禍
読み方:コロナか
意味:いわゆる新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が招いた危機的・災厄的な状況のこと。社会的・政治的・経済的な、混乱・不安・損失などを総称した言い方。
『新語時事用語辞典(オンライン)』
新型コロナはまだまだ終息(完全に終わること)には向かっていない。いや、収束(ある一定の状態に落ち着くこと)というべきか。日本語の同音異義語は面白い。
7月5日に屋内での飲食が再開される予定だったのだが、デルタ変異株がやはりアイルランドでも広まってきて予断を許さない状況であることから、政府は予定を変更し、「屋内飲食は早くても7月19日から」と6月29日に発表した。テラス席などが設けられないパブやレストランにとっては、店内での営業再開が頼みの綱だったので、緊急公衆衛生チーム(The National Public Health and Emergency Team、通称ネフェット Nphet) のアドバイスを受けての政府の突然の方針転換に、とまどいや怒りを隠せない。