久々の外食でチップをはずむ
先月、アイルランドの国営医療サービス(HSE)がランサムウェア(身代金要求型のコンピューターウイルス)による大規模なサイバー攻撃を受けるというとんでもないことがあった。
そのため国立病院では外来予約の中止、がん治療の遅れなど、深刻な被害が出てしまった。アイルランドは身代金は支払わない方針で、国防軍、警察、サイバーセキュリティ専門家らと被害の回復に務めた。
不幸中の幸いで、新型コロナウィルスのワクチン接種プログラムはサイバー攻撃の影響を受けなかった。お隣のイギリスでは、インドで発見された変異ウイルス「デルタ株」による感染拡大が問題視されており、北アイルランドでもついに数日前にこの変異ウイルスの感染が確認され、徹底的な消毒と検査で感染の拡がりをを食い止めようとしている。予断は許されないが、ワクチン接種者は順調に増えているし、天気もよくなってきているので、外に出ていろいろなことがしたい、「普通の生活」に少しでも戻りたいという国民の願いは切実だ。
日本でも「ステイホーム」という言葉が定着したようですね。アイルランドの RTÉ のチャンネルではまだ「Stay Safe(無事でいて、安全でいて、気をつけて、といった意味)」の文字が画面に常に出ている。アイルランド語(ゲール語)でも。
(画像はともに2021年6月7日の RTÉ 放送より)
その願いを反映してか、5月に予定していたとおり、昨日(6月7日)からさらにロックダウンが緩和された。
制限緩和の内容は、映画館、劇場、テーマパークの再開、自宅への訪問者受け入れ(ワクチン未接種の家族でも、他のワクチン未接種の家族一世帯を屋内に迎えてよい)、スポーツの屋外試合、ジムやプールでの個人トレーニングの再開など。そして、レストランやバーの屋外営業の再開!
昨日はアイルランドのバンク・ホリデー。バンク・ホリデーとは、もともとは金融機関の一斉休業日だったが、今は学校やほとんどの職場も休みになる「祝日」のようなものである。私も仕事がオフなので、屋外営業再開の第一日目に、夫と近所のパブレストランに食べに行くことにした。
わが家から徒歩10分ほどのところに2軒のパブがある。どちらもテーブル席が中心で、数年に一度は内装をリフレッシュしたりメニューの見直しをしたりして、古き良きアイルランドのパブの雰囲気を残しながらも、ちょっと落ち着ける空間になっている。ロックダウン中はほとんど営業できなかったが、一方は本格ピザのテイクアウトを始め、もう一方は駐車場にテイクアウト専門のカフェを設置するなど、涙ぐましい努力を続けてきた。
どちらのパブにも以前から喫煙者用の屋外スペースがあったが、今後はしばらく屋外でのみの営業ということで、雨よけの天蓋(てんがい)やひさしを補強しているはずだ。屋外スペースが大きいと記憶している方のパブを予約しようとすると、夜はもうすべて予約でいっぱいだったので、営業開始と同時の午後2時に何とかテーブル席を確保した。
店内に通されると(マスク着用)、古株のスタッフが踊りださんばかりに元気に迎えてくれた。「パブの営業はクリスマス以来だから本当に嬉しい!」「君たちが再オープン最初のお客さんのひとりだよ。You are one of the first customers since reopening!」といそいそと屋外スペースに案内してくれる。
以前は喫煙者のたまり場になっていた小さなスペースが、何倍もの大きさに改装されていた。この日を最高の状態で迎えるために、がんばって準備してきたんだなとしみじみ。
近所のパブ「The Laurels(月桂樹)」。妹が前回遊びに来てくれたときにも行った。
新しい屋外スペース。ギネスビールのデザイン(アイリッシュハープがシンボル)が目を引くキッチュな空間に生まれ変わった。私たちが座ったエリアの壁には「No Smoking」という表示があった。このエリアの奥に行くと天井がなく、外の駐車場に通じるようになっている。
ギネスビールの樽の上に消毒グッズが置いてある。
スターターを2つ注文することにする。スターターといっても量はかなり多いので、昼食には十分。夫はお気に入りのチキンウィングとフライドポテトを頼む。チキンウィングには酸っぱくて辛いソースがこってりで、ポテトとも相性抜群のブルーチーズソースもつけ合わせで出てくる。私は新しくメニューに加わった「デュオ・スライダー」を試してみることにした。
Duo sliders €9.95
Bite sized homemade beef burger
Bite sized Louisiana fried chicken burger
With sliced beef tomatoes, iceberg lettuce, secret burger sauce served on toasted brioche bun.
ひと口サイズのビーフバーガーとルイジアナフライドチキンバーガー。どちらもトーストしたブリオッシュにビーフトマト、レタス、秘密のソースを挟んだもの。
「ひと口サイズ」とあるけれど、マクドナルドなどのファーストフード店のバーガーとよく似たサイズで、それが二つもあるので一人ではとても食べ切れない。夫のチキンウィングを少しもらい、バーガーを半分ずつに切って夫に寄こす。ルイジアナフライドチキンとは何ぞや?と思って食べてみると、ちょっとスパイシーでサクッと揚がった厚い衣に、中はジューシーなチキンで、アツアツでおいしい。また、バーガーに挟まれているビーフトマト(トマトの種類)は、厚くスライスしてあって、どちらのお肉とも合う。秘密のソースはマヨネーズとケチャップにスパイスが混ぜてある感じ。この値段(約1300円)でこのボリュームと味は特筆に値する。
次回も注文間違いなしの「デュオ・スライダー」。
久しぶりの外食を心ゆくまで堪能し、ビールとワインも入って二人ともお腹いっぱいになった。お客さんもスタッフもみんな幸せいっぱいで、多少大声を出して騒ぐ人がいても、今日ばかりはご愛敬、と温かく見守る。
お会計を頼むと、スターター2つ、サイドディッシュ(フライドポテト)ひとつ、ビール1パイント、白ワイングラス2杯で、しめて41ユーロ90セント(約5500円)。アイルランドではホテルやタクシーなどを利用する際はチップが必要ないのだが、テーブルサービスを受けたレストランでは会計時に約10%のチップを置いておくのが常識だ。クレジットカードに加算できるシステムを導入しているレストランもあるが、このパブはカードにチップは加算できない。そこで支払いはカードで済ませ、5ユーロ分の小銭をテーブルに置く。
最近はキャッシュレス、コンタクトレス(非接触決済)で、何を買うのもカードで支払いを済ませて現金は持ち歩かないのだが、今回はチップのためにわざわざ小銭を用意してきたのだ。12%のチップということになる。一応、はずんだつもり。