日本語を勉強している高校生の男の子から、「Bald って日本語で何て言うの」と聞かれ、思わずウッとなった。Bald なのか bold なのか一瞬聞き取れなかったのだ。この二つの言葉の意味はかなり違う。

Bald は、そう、頭がはげていること。そして bold は、「勇気がある」「大胆な」という意味。

この高校生は、「髪が長い」とか「背が高い」とか「目が大きい」といった、人の身体的特徴についての表現を学習しているところだったので、頭のことを聞いているのだろうと次の一瞬で察した。家族に頭の薄い人がいるのかもしれない。「ある、ない」の表現はもう学習済みだったので、「髪がない」と言えばいいと教えてあげた。誰かにお父さんのことを聞かれたとき、「ぼくの父はハゲです」と言うより「髪がありません」と言った方が失礼ではないだろうと思って。

この二つの言葉を発音するときは、「オー」の発音の仕方に気をつけなければならない。「頭のはげた」の bald は「ball ボール(球)」のように長くオーを発音し、ボールドとなる。「勇気がある」の bold はサラダボウルの「ボウ」をカタカナ通りに言うとして、ボォゥルドですね。

Bald:母音の O を、口を大きく開けた後、唇を丸くして前に突き出した形で「オー」と長く言う。発音記号は「ɔː」。ball ボール、all すべて、call 呼ぶ、などが同様の発音。

Bold:二重母音の OU を「o」から「u」へ滑らかに変化させ、一つの音として表現する(前の音ははっきりと強く、後ろの音はぼかす)。ほぼ日本語の「オゥ」だが、「u」は唇を丸くして前に突き出して発音する。bowl ボウル、cold 寒い・冷たい、old 古い、goat ヤギ、など。

リスニングはもちろん、自分で発音するときも両者の発音の違いを意識しなければならない。Called と cold も同様に混同しやすい発音のペア。「あなたは何て呼ばれているの。What are you called?」と名前を聞いているのに、「え?寒いかって?What? Are you cold?」と聞いていると思われる可能性も。

Bald と bold は全然意味が違うから、普通は会話の流れからどちらのことを言っているのかくみ取れる。でも実は、この「勇気のある」「大胆な」という意味の bold、アイルランドでは別の意味で使われることの方が多い。学校や家で悪さをした子どもをしかるときには「悪さするんじゃないよ!Don’t be bold!」と使う。Naughty(ノーティー)と同じような意味(わいせつな、という意味ではなく)。

また、悪い意味でちょっと大胆というか、むしろ厚かましいという意味で使われることもしょっちゅうだ。調子がよすぎてこちらがあきれてしまうような男の人を指すのにぴったりの表現。

「あのお店で値切ろうとするなんて、あの人ちょっと厚かましいよね。He is so bold to ask for a discount in that shop!」

「あの男の子には気をつけなよ、ほんと調子がいいやつだから。Be careful with him - he is a bold boy.」

間違っても、「頭に髪の毛がないから気をつけた方がいい」と誤解しないように!