フランス映画でホリデー気分
「I am taking holidays」とは「(一日以上の)休暇を取る」という意味。「I am going on holidays」は「休暇に入る」ということなのだろうが、たいてい「休暇でどこかに行く」というニュアンスで使う。これまで私は、数日間の休暇を取るのは旅行に行くためだったから、「ホリデー」と「旅行」は同義語のように感じていた。
アイルランドでは基本的にイギリス英語の綴りと文法を使うが、もちろん異なることもある。「休暇でパリに旅行に行った。 I went on holidays to Paris.」の場合、ホリデーが on holidays と複数形になるのが普通だが、イギリスでは on holiday と単数形になるのが正しいらしい。また、アメリカ英語では「仕事や学校の休日」の意味では holiday ではなく vacation を使う。
コロナのおかげで旅行はおろか、映画や観劇、美術館巡りという娯楽も享受できなくなって久しい。私は以前は映画館にせっせと足を運んで年に50本ほど映画を観ていたが、ここ一年は、オンラインの映画の定額配信サービス MUBI で新旧の名作を鑑賞している。
今月は、フランスのエリック・ロメール監督の1980年代の作品を立て続けに6本観た。どれも20代のどこにでもいそうな男女の恋愛をコミカルに描いたもの。ロメール作品常連の俳優たちの演技ぶり、成長ぶりを観察するのも楽しい。
映画の中では「バカンスはいつから?」「どこに誰と行くの?」とよくバカンスが話題に挙がる。『海辺のポーリーヌ』(Pauline à la plage: 1983)などはバカンス先のひと騒動の話だ。観ていてまたフランスに行きたくなった。
2020年3月、フランスのボルドー旅行が最後の海外旅行。滞在中にフランスがロックダウンに入り、アイルランドに帰国できるかどうかひやひやした。あんな時期に旅行をしたのは浅はかでした。
『緑の光線 』(Le Rayon Vert: 1986)の主人公デルフィーヌは、パリで一人暮らしをし、オフィスで秘書として働く20代後半の女の子。友人とのギリシャ旅行が出発2週間前にキャンセルになってしまい途方に暮れるところから話は始まる。
デルフィーヌがセーヌ川沿いを歩き回ったり、リュクサンブール公園やカフェで友だちと話し込んだりするシーンに私の心はパリに飛ぶ。でも彼女はバカンス中パリに居残りたくない。「一人で知らないところに行くのはいや。でもいっしょに行く人が今からじゃ見つからない」と泣きべそをかくのを友人たちが慰める。
デルフィーヌの姉夫婦にはアイルランド人のベビーシッターがいて、ここ数年はバカンスにはキャンピングカーでアイルランドに行くことにしている。デルフィーヌはいっしょに行こうと誘われるが、「別の季節にならいいけど、夏はもっと暖かい国に行きたい。海で泳いで日に焼けたいの」と断る。確かにそういう目的ならアイルランドには行かない方がいい。ダブリンでは7月でも平均最高気温は20度ほどしかないのだから。
アイルランドも島国なので、「海外に行く」イコール「外国に行く」いう感覚は日本と同じだ。2019年には、アイルランドで約580万人が国内旅行をし、約560万人が海外旅行をしたという国立統計センター Central Statistics Office のデータがある。人口は約500万だから、単純計算すると国民全員が年に一度は海外旅行、一度は国内旅行をしたということになる。平均滞在期間は、国内旅行は2.5泊(7月から9月の平均は3.3泊)、海外の場合は6.2泊で約一週間だ。
海外旅行の行き先の一番人気はイギリスとスペイン。スペイン本土よりも、大西洋のスペイン領カナリア諸島(テネリフェ島など)や西地中海のバレアレス諸島(マジョルカ島など)のリゾートが人気だと思う。海辺に寝そべって日に焼けたり、普段はなかなか時間が取れない読書に没頭したりするのがホリデー旅行の定番だ。
コロナ以後、休暇に対する考え方が大きく変わった。何しろほんの2週間前までは、不要不急の外出を除いては行動制限範囲は家から半径5キロだったし、今もまだ20キロだ。義母とも8カ月会っていない。休暇を取っても旅行どころではないが、有給休暇は消化しなければならない。そこでガーデニングや部屋の模様替えなどに精を出す人が多いが、もっと違うこともしたいという願いは切実になってきた。
私は外国の知らない街を歩き回ってお店や美術館をのぞいたり、地元の人といっしょに名所を巡るツアーに参加したりするのが好き。あとしばらくはそれもお預けだから、仕事が忙しくない今のうちに少し休暇を取って、うちで外国映画を観て休暇気分に浸ることにする。
私は外国の知らない街を歩き回ってお店や美術館をのぞいたり、地元の人といっしょに名所を巡るツアーに参加したりするのが好き。あとしばらくはそれもお預けだから、仕事が忙しくない今のうちに少し休暇を取って、うちで外国映画を観て休暇気分に浸ることにする。
ガルダ(Garda: アイルランドの警察)による行動制限チェック。一台一台車を止めて行き先や目的を聞く。私の近所で検査があったことも。