イースターチョコはスイーツ sweets?
アイルランドでは、クリスマスの次に大きな行事はイースター(復活祭)。この時期になると、卵とウサギをかたどったチョコレートがずらりと店頭に並ぶ。先週、近所の大きなスーパーに買い物に行ったら、ほとんどすべての買い物客のカートにイースターチョコレートが入っていた。
復活祭とは、イエス・キリストが死後3日目に復活したことを祝うキリスト教の行事。この日は基本的に「春分の日の後の最初の満月の次の日曜日」なので、毎年変わる。今年は4月4日の日曜日。生命と再生のシンボルを卵とウサギに求めて、復活祭の行事にはイースターエッグとイースターバニーがよくモチーフとして出てくる。
アイルランドでは、バレンタインには愛する人に(家族でも恋人でも)カードと花束を贈るのが主流。ちょっと高級な小ぶりなチョコレートボックスを贈る人もいるが、チョコレート商戦はそれほど激しくはない。
そこでチョコレート会社が本腰を入れるのはイースターだ。様々なサイズとデザインのイースターエッグとバニーのチョコレートがスーパーの陳列棚、レジの周りを占領し、甘いもの好き、チョコ好きの大人と子どもの手がつい伸びてしまうようになっている。
スーパーの大きな陳列棚がイースターチョコで埋め尽くされる。
一昔前のアイルランドには、イースターの日曜日の前の約7週間、お菓子やタバコ、アルコールなどを断つ人がたくさんいた。これは「四旬節 Lent」の節制で、イエスが40日間荒野で断食をし、悪魔の誘惑と闘ったことにならっている。自分の好きな食べ物や娯楽を諦めることで、イエスの苦しみを分かち合おうというものだ。
アイルランド人の友人の多くが、子ども時代にはこの期間 sweets を食べるのを我慢したそうだ。甘いものに目がない夫も、お店で sweets を買い食いすることをやめたそう。え?チョコレートも食べなかったの?と目を丸くすると、「お店で買ったりはしなかった。うちで作ったケーキとかは食べたし、ちょうどおじいさんの誕生日があって、そのときにもらうお菓子は例外だった」とのこと。子どもに40日は長いから、そのくらい許します。
ちなみに日本語でスイーツというと、チョコレートもケーキも和菓子も含んだお菓子全般を指すようだが、アイルランドではアメやグミのこと。チョコレートはそのまま chocolate で厳密には sweets とは区別するのだが、アメやグミのように小ぶりなパッケージで同じような場所で売られることが多いので、sweets というとチョコレートも含むこともある。
大人になっても四旬節の節制を守り、「ビールを断ってる。パブに行ったら飲みたくなるから行かない」と誘いを断る人や、「コーヒーを飲まないようにしてるのよ、だから朝、頭がすっきり冷めなくって」と仕事がはかどらない理由にする同僚がいた。でも最近は四旬節より、Dry January といって、1月中にアルコールを控える人が増えてきている。クリスマスの時期にパーティー続きで暴飲暴食をしたことを反省して、だ。
去年(2020年)の12月初め、あるニュースが話題になった。11月にアマゾンオンラインショップで買った人がアイルランド全体で激増、アマゾンでのデビットカードの消費額が前年度の3倍だったというのだ。アイルランドには Amazon はまだないから、海外の Amazon(ほとんどがイギリスの Amazon)で買って、アイルランドに配達してもらう。つまり、家族や友人へのクリスマスギフトを買うのに、海外資本の会社に大量のお金を落としたということになる。
コロナによって、特に個人経営の店や小さい企業の多くが経営難に陥っている様子が毎日報じられる中で、このニュースはショックだった。
これを機に、もっと自分の国のビジネスを応援しよう、身近にいる誰かが経営しているオンラインショップで買い物をしようという動きが盛んになった。テレビでもインターネットでもラジオでも(ラジオはアイルランドで根強い人気がある)、アイルランド資本の店のプロモーションに力を入れるようになった。
その動きは今でも続いている。今年のイースターチョコレートは、アイルランドの会社のもの、アイルランド在住のチョコレート職人の作ったものがよく紹介されているし、大手のスーパーもそういうチョコレートを売るようになった。私も地元のビジネスを助けると思って、もっと買っちゃおうかなー。
今年わが家で買ったイースターエッグ(大手チョコレートメーカーの定番)。開けたらすでに欠けていた…。
サプライズで夫の親戚からイースターギフトが届きました! チョコレート、クラッカー、チーズとワイン。ワイン以外はどれもアイルランド産。