ファンタジー文学といっしょに育った人は幸せだ
子どものころから本を読むことが好きで、小学生の頃は洋の東西を問わずファンタジー文学に夢中だった。
特に学校を舞台にした作品の臨場感にわくわくさせられたのは、小学校の図工の教師を長年務めていらした岡田淳さんの数々の名作。『ようこそ、おまけの時間に』『二分間の冒険』『びりっかすの神様』などだ。新しい作品が出るたびに胸を膨らませて読んでいた。大学生になるとさすがに小学生が主人公の児童書は読まなくなってしまったのだけれど。岡田さんはマンガ家でもあり、今も精力的に創作活動をされている。
また、柏葉幸子さんの『霧のむこうのふしぎな町』『地下室からのふしぎな旅』の世界も魅力的だった。どこにでもいそうな普通の女の子の主人公が、ひょんなことから別世界に迷い込むのだが、私も何とかそういう摩訶不思議な世界に行って奇妙な登場人物たちに会えないものかと祈りながら眠りについた。私の世界を豊かにしてくれたこれらの本は、アイルランドに持ってきて本棚に収め、折に触れて手に取っている。
小学生のとき、『霧のむこうのふしぎな町』のブックカバーを家庭科のプロジェクトとして作ってしまった。 タケカワコウさんのイラストのすてきな表紙。
ちなみに、『地下室からのふしぎな旅』は2019年に『バースデー・ワンダーランド』というアニメ映画になったそうだ。出版40年経っても人気があるってすごい。映画のあらすじを調べてみたら原作とはかなり違う切り口だけれど、機会があればぜひ観てみたい。
アイルランドで数年前、当時25歳くらいだった女の子と話していたら、彼女はその週末は友達とハリー・ポッターのDVD映画を観る予定だと言った。何本かまとめてマラソン上映会をするのだと興奮していた。ハリー・ポッターシリーズの最後の映画が劇場公開になってから数年後のことだ。
1990年ごろに生まれた彼女はまさにハリー・ポッター世代。シリーズ原作は映画化されるそれぞれ数年前の1997年から2007年に出版されているから、彼女がちょうど小、中高生の時に毎年のようにシリーズの新しい本が出て、キャラクターといっしょに成長していたことになる。
「新作が出るたびに弟や友達と書店で並んで買ったんだけど、ほんと、お祭り騒ぎだった。キャラクターの衣装を着てドレスアップして並んだ子もたくさんいた」
ハリポタたちといっしょに育った友達と、映画を観ながら子どものときのワクワクを共有できるのは特別なこと。私の場合はいつも学校や町の図書館で本を借りて読んでいたのだが、特に友だちと本の話をすることはなかったように思う。ハリポタ世代がちょっとうらやましいなと思った。
わが家(ダブリン)の本棚の一部。大人になって買いそろえた本もある。